信州味噌 皆さま、お変わりないでしょうか。 栃木県の朝鮮学校への補助金について調べていたところ、以下の論文?がありましたので、報告させていただきます。 寒くなってまいりました。 風邪など召さぬようご自愛くださいませ。
民族教育のあり方 −在日朝鮮人教育を事例として― 宇都宮大学国際学部国際社会学科 野村 綾(2年) 石見 多恵(3年) はじめに 1. 民族教育事業のこれまでの動き 2. 朝鮮学校の位置付け 3. 民族教育の現場−小山市を事例として− まとめ (別紙) @表1〜3、表5〜6 A公開授業内容及び質問内容と回答のまとめ(栃木朝鮮初中級学校において) はじめに 日本に居住する外国人は、オールドカマ−またはニューカマーとに分けられる。 外国人全体の人口を見ると、ここ数年でニューカマーの比率が増え、オールドカマ−を代表する韓国・朝鮮人が占める割合が年々減少する傾向がある。 韓国・朝鮮人においては、1世の高齢化と同時に帰化する人の増加がそのような現象に繋がっているものと思われる。 (別紙:表1表2参照) 「在日問題」は、日韓・日朝両国にまたがる問題であり、日本の植民地時代の遺産をまともに清算していないことを象徴する代表的な例ということができる。 今回、我々は「在日外国人教育」を在日韓国・朝鮮人教育を事例に取り上げた。 常に被差別少数者として生きてきた在日の人たちが、国内において日本人と対等の扱いを受けていないという現状に置かれ、教育面においても納税などの義務を果たしているにもかかわらず、日本人と対等の扱い・機会を与えられてはいない。 国立大学の受験資格問題、またテポドン騒動の最中には,朝鮮学校に通う児童・生徒が悪質な嫌がらせ、脅迫、暴行をうけた。 常に差別を感じながら生きている在日の人が多いというこの社会に対し、疑問を抱いたということが今回のテーマ設定の動機である。 現在彼らがどのような状況に置かれているのかというところに基本的関心を置き,朝鮮学校で行われている民族教育への正当な理解がされていないという現状、また彼らを取り巻く日本社会、とりわけ行政の対応に焦点を当てた。 そして民族教育の現状を把握するためには、今日行われている民族教育とその歴史の関連性および歴史的背景を認識することが必要となり、今回はそれらも論点に踏まえた。 今日存在する差別、または格差を量的・質的という2つの視点をあわせ、今回の発表としたい。 またこのような作業を通して、今後の民族教育の方向性が見えてくるのではないかと考える。 また在日問題の本質とも言える『民族』や『エスニシティ』といった概念も踏まえながら論じていくことが不可欠であるということも付け加えておく。
1.民族教育事業のこれまでの動き (1) 2世への朝鮮語教育 (2) 朝連と総聯:朝連(在日本朝鮮人連盟)は,当時唯一の在日朝鮮人の自主的な組織で在日の 約7割を結集する団体であった。 民族教育の成立・発展の基礎となった。 1949年9月8日に解散を命じられ、その後1955年5月に総聯(在日朝鮮人総聯合会)が結成される。 これによって団結が回復し、さらに共和国公民(朝鮮民主主義人民共和国)としての自覚も徹底し、民族教育の発展期に入る。 (3) 朝連とGHQ、日本政府との対立 (4) 公教育制度の中に存在した民族学校 * 1945.8.15 植民地解放:本国へ帰る者、日本に残る者 1945.10.15 在日本朝鮮人連盟結成(以下朝連) 1948.8 大韓民国成立 1948.9 朝鮮民主主義人民共和国成立 ― この頃、民族学校は600校に上っていた。 ◆ ― 1948 GHQが各都道府県の朝鮮学校に学校教育法による認可を求めさせ、認可を受けない場合は、閉鎖させるように指示 1948.1.24 通達「朝鮮人設立学校の取り扱いについて」⇒政府が民族教育を取り締まるという方針が明確化した。 「朝鮮人子弟であっても、学齢に該当する者は、日本人同様、市町村立又は私立の小学校又は中学校に就学させなければならない。」 1948.3.6 朝連は6項の要求を文部省に提出回答を求めるが文部省はそれを拒否⇒阪神教育事件にまで発展する 1949.9.8 朝連解散、同時に民族学校の多くが閉鎖され、児童は公立の小中学校へ。 1952.4 サンフランシスコ講和条約発効 朝鮮人は日本国籍を喪失する。 1955.5 在日本朝鮮人聯合(以下総聯) 1975 すべての朝鮮学校の学校法人認可を獲得 参照資料・李 守「多文化社会と教育―在日朝鮮人の事例を中心に―」『学苑 昭和女子大学近代文化研究所U編』1998年5月 698号 ・小沢 有「在日朝鮮人教育論(歴史編)」亜紀書房1973年 ・中山秀雄「在日朝鮮人教育関係資料集」明石書店1995年 ・鄭早苗・朴一・金英達・仲原良二・藤井幸之助編「全国自治体在日外国人教育方針・ 指針集成」明石出版 1995年 2. 朝鮮学校の位置付け (1)「朝鮮学校」は、学校教育法における専修学校に分類される。 『学校教育法』第一条「この法律で、学校とは小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園とする」 同第八十二条の二「第一条にあげるもの以外の教育施設で、職業若しくは実生活に必要な能力を育成し、又な教養の向上を図ることを目的として…組織的な教育を行うものは、専修学校とする。」 「朝鮮人のみを収容する教育施設の取り扱いについて」 (昭和40年12月28日文部省事務次官から各都道府県教育委員会、各都道府県知事あて) 2(1)…これを学校教育法第一条の学校として認可すべきでないこと。 (2)…各種学校として認可すべきでないこと。 また、…この種の朝鮮人学校設置を目的とする準学校法人の設立についても、これを認可すべきでないこと。
(2)「朝鮮人学校」に対する諸都市の対応 『在日外国人教育に関する行政文書』 @「大阪市外国籍住民施策基本方針〜共生社会の実現をめざして〜(1998年3月策定)」 私立学校への助成は、本来、私学行政を所管する国又は都道府県が行うべきものであるが、大阪市としては、外国人学校が長年にわたり外国籍の児童・生徒に対して、学校教育法に規定する小・中学校教育に準ずる教育を実施している実態を考慮し、助成しているものである。 (同基本方針「外国人学校への支援」より) A「在日韓国・朝鮮人問題に関する指導指針(1998年3月改訂)」大阪府、より抜粋 1、 すべての児童・生徒に対し、在日韓国・朝鮮人児童が在籍している歴史的経緯や社会的背景を正しく認識させるとともに、朝鮮半島の文化や歴史についての理解を深めさせるよう努めること。 2、 在日韓国・朝鮮人児童・生徒が本名を使用することは、本人のアイデンティティの確立にかかわることである。 3、 在日韓国・朝鮮人児童・生徒が将来の進路を自らが選択し、自己を実現し得るよう、進路指導の充実を図るとともに、関係諸機関との連携を密にし適切な指導に努めること。 4、 在日韓国・朝鮮人問題の指導の推進を図るため、教職員研修の充実に努めること。 『補助制度』について 1、 就学補助制度:対象者は公立小中学校在籍者のうち、市民税課税、もしくは均等割の み課税のもの、または減免された者。 →外国人学校は除外(しかし、京都市・吹田市などでは、市町村レベルにおいて人道上の判断を優先しこれを外国人学校に適応している。) 2、 就園奨励補助:対象者は私立幼稚園在籍児童全員→外国人学校は除外(しかし、横浜 市などでは朝鮮学園の幼稚部にも適用している。) 3、 外国人学校保護者補助:負担の大きい保護者への救済として、保護者補助という人道 的措置を講じている。 (川崎市、広島市、東京23区、宝塚市など) *1,2は国の制度であるが、市町村レベルではこれを外国人学校にも適応させている。 (例)東京都江戸川区は、外国人学校保護者に月額16,000円を支給している。 (3)朝鮮学校の学校運営について 1、 学校運営のための資金 朝鮮学校など民族学校における運営費の大部分は保護者が負担している。 朝鮮学校は、法的に私立学校として認可されておらず、専修学校として扱われている。 そのため、朝鮮学校は十分な助成金を得てはいない。 その差は歴然である。 (表4参照)この他に、小中学校に限り東京都の各区・市の児童生徒保護者への補助金として月額1,000〜14,000円が支給されている。 @高校 A中学 B小学 C朝鮮学校への補助金 学校単位金額 1,200 1,200 1,800 学級単位金額 40 70 55 教員単位金額 400 450 470 生徒単位金額 4.6 6 4 1.5 表4:東京都平成8年度交付規準額(単位:万円)@AB 東京都教育研究費助成金(単位:万円)C 東京都以外では、神奈川県と大阪府の一人当りの年額約8万円を最高に、全国平均は約2万円である(愛知県は0円)。 朝鮮学校の数は首都圏から離れるほど少なく、そのため遠方から通う生徒も多いため、保護者の負担はさらに増えることになる。 在日朝鮮人も納税の義務を負っており、これを行っている。 それにもかかわらず、公的機関からの助成金は、在日朝鮮・韓国人数が最も多い大阪でも私立学校の1/4、その他の府県では1/10にも満たない。 ちなみに栃木県は、「専修学校等運営費補助金」として1997年に174万円を助成しているが他の道府県と比較しても最低である(別紙:表5参照)。 また、市区町村別に見ても栃木県小山市の生徒一人当りの助成額は最低額の19,000円であった(別紙:表6参照)。 このように十分な助成が行われていないことから、朝鮮学校の運営は苦しく、教育設備の劣化が激しい。 また朝鮮学校職員の給与は日本の学校のそれと比較しても低額である(表7)。
東京都 朝鮮人学校 (諸手当を含む) 初任給 196,000 124,000 勤続20年 373,000 301,000 表7:1996年度職員給与(単位:円) 日本の文部省は『文部省ニュース』の中で「世界で外国人学校に対して経済的支援を行っている国・州等は一部であり、大半は行っていない。」「所在国・地域の中央政府等から経済支援を受けている学校はほとんどない」「本国の中央政府等から経済支援を受けている学校はかなり見受けられる」という調査結果を発表している。 しかし、朝鮮学校が他の外国人学校と異なり、日本に定住することを前提とした在日朝鮮人の子弟が通っており、その保護者が納税の義務を果たしていることを考えれば朝鮮学校への助成金は非常に不足していると言わざるをえない。 3.民族教育の現場 ―小山市を事例として― * 栃木朝鮮初中級学校(生徒数74人中小山市内に居住しているのは39人) * 公開授業(別紙参照) * 行政の対応(栃木県・小山市) 小山市学校教育課(1999.11.10訪問) :基本的に朝鮮学校には、小山市は関わっていない。 :補助金⇒年間162万円 :小山市は朝鮮学校に対する基本的な指針は持ってはいない。 (大阪など在日が多い自治体では指針を持っている。) :地域との関わりは各小中学校校長の判断に任され、そこで交流が行われる。 :担当者の意見⇒地域の公立学校は朝鮮の人に対しても門を開いている。 どうして地域の学校に入らないのか。 栃木県文書学事課私学助成係(1999.11.12訪問) :朝鮮学校に対しての法的説明 学校教育法 第83条における各種学校朝鮮人学校制定 文部省「朝鮮人のみ収容する教育施設の取り扱いについて」(1967年) :補助金 ⇒ 平成10年 1,740,000円 :担当者の意見⇒文部省が変わらない限り、県はこれ以上できない。
* 財源の問題(現状維持) * 県と市の現状把握の違い(朝鮮学校からの要望書は小山市に提出されるため、県は現状把握が難しい。 ) まとめとして 近年、在日に関わる問題が論じられる機会が多い。 今回「在日朝鮮人における民族教育の現状」をテーマに学習し、歴史的な背景・法的位置付け・民族教育の現場と様々な角度からアプローチしてきた。 民族教育を受けている在日の数は、全体の半数にも満たないという統計がある。 とりわけ韓国籍の在日においては、民族学校での就学経験がないという人が全体の5割強に及んでいる(在日韓国青年商工連合会「在日韓国人の社会成層と社会意識全国調査-報告書-」1997.7.12:155頁)。 全体的に帰化が増加しているということ、また在日の中心になっている2世,3世と1世との民族に対する意識のずれも生じてきているという事実、また北朝鮮籍から韓国籍への移籍の増加、「3.朝鮮学校の位置付け」でも取り上げたが、朝鮮学校における保護者負担が大きいことから、民族教育を受ける機会がごく少数者に限られてくるということ、また在日が集中している都市と地方では民族教育を受ける機会、またその教育体制の格差があるということを合わせて認識した(別紙:表3参照)。 帰化に関していえば、帰化の増加は民族とりわけ在日を生きてきた1世とっては危機的現象であり、本国に住む韓国人から見ると、帰化することは制度的な差別を受けることがなくなる一方で、自らの民族としてのアイデンティティが薄れてしまうと批判的な視点もある。 (参照: しかし、彼らが帰化しなくてはいけないと解釈する背景に、日本社会での差別、格差が生じていて、むしろ彼らを帰化させているといっても過言ではないだろう。 彼らにとっての「権利」を定義づけることは難しいが、韓国人としてまたは北朝鮮公民として日本社会で生きていくことに尽きるのではないか。 その場合、民族教育の必要性が高く、現在の日本の教育システムと民族教育との関係を見直すことが不可欠であるし、我々の民族教育への理解を高めることが重要であるのではないか。 「日本による朝鮮侵略、植民地化によって結果的に「在日」となった朝鮮の人々であるが、現在彼らが求めている民族教育の基は、日本に奪われてしまった言葉と文化,アイデンティティーを取り戻すために始まったものであって、そのような「在日」の人々、また朝鮮学校は、日本の政府,社会に保護されるべきではあるが差別される理由はどこにもないのである・・・。」 * 朝鮮新報「朝鮮学校の場所」1999年5月〜6月連載 『(6)マイノリティーの教育』より (別紙 ) 栃木県朝鮮初中級学校への質問 質問者 石見 多恵 回答者 栃木朝鮮初中級学校校長 @ 外国人全体で朝鮮人が占める割合が減る中,朝鮮学校の児童数も減少傾向にあるがそのことによって学校運営に支障が出ているか? ?* 在日の人口は確かに減っている。 しかし、それだけが朝鮮学校の児童減少の要因とは言えない。 日本の公立学校に通わせたほうが,子供の将来に良いと考える保護者も増えてきている。 これは世代交代が表している象徴的なものであるが、そればかりでなくそうせざるを得ない状況を日本社会がつくりだしているということを忘れてはならない。 A 民族アイデンティティを高めるための民族教育であるが、その教育を行うことに対して、行政(国・栃木県・小山市)に要望、不満などはないか? ?* とにかく助成金を増やしてほしいということに尽きる。 せめて私立学校並に増やしてもらいたい。 また,同胞が日本の公立学校に通うケースが増えてきている(これは北朝鮮系のみならず,韓国系の在日も含まれる)。 日本社会全体に対して、家庭では本名を使い、学校では通名を使用していて受け皿を作っていただきたい。 ttp://gyosei.mine.utsunomiya-u.ac.jp/1999jointo/minzoc.doc
.....ばかばかしくてコメントのしようがないね。